長年行政書士をしてきて様々な相続手続きに関わってきましたが、亡くなられた方の生前は仲の良かった親族が、故人の残した財産の分け方をめぐって骨肉の争いをするケースを数多くみてきました。
財産を家族に残したがために家族で争いが起こるのでは、故人は浮かばれませんね。 そのような争いを生じさせないためにこそ、生前ご自分の意志によって、遺産の分け方を指定することが必要です。
よく「住んでいる土地と家以外にたいした財産はないから、遺言なんて必要ないよ。」と言われる方がいらっしゃいますが、逆に金銭等と違って簡単に分けられない財産だからこそ面倒が多く生じるのです。
そして相続をめぐる争いを防止し、残された家族の円満な関係を保つためにできる最良・唯一の手段が遺言書の作成なのです。
また遺言書には法的な機能以外にも、自分自身の思いをメッセージとして書き残すことが出来る役割もあります。
なお遺言と聞くと、高齢になってから遺言書を作成するイメージをお持ちの方も多いでしょうが、それにはある危険が潜んでいます。
実は、有効な遺言を作成するためには、遺言者に、遺言書を作成する時に、自分の行為を判断することができる能力がなければならないのです。
これを遺言能力といいます。
もし認知症などを発症してしまい、遺言能力が十分でなくなってしまうと、認知症発症後に作成した遺言が、無効とされてしまう可能性があるのです。
こうしたトラブルを防ぐためには、心身ともに健康である状態の時に、遺言を作成しておく必要があります。